1982年3月、宮古諸島池間島北方にある“幻の大陸”こと「八重干瀬」の調査時、地元の漁師が採取したシャコガイの中に「オオジャコガイ」の殻が混じっているのを発見した。聞き取りによれば、前年の11月、島の北方沖合約500b、水深8bの海底で見付けたという。生きていた証拠は歴然!殻の内側にまだやわらかい肉片が付いていた。「日本貝類学会」の見解として、オオジャコガイは、現在、日本には棲息しないと決定したばかりだという。このニュースは、マスコミ報道により全国に広まり話題となった。その後、よく似た若い個体が、同じく宮古島北部海域から見つかり、詳しい情報がマスコミによってもたらされた。このことから、いない筈のオオジャコガイは明らかにわが国にも棲息していることが再確認された。すなわち、学会の定説は覆ったことになる。因みに、ギネス記録の個体はいずれも4300年前に絶滅した死殻である。

  

沖縄県宮古諸島池間島で発見された「オオジャコガイ

世界各地の海水温と「オオジャコガイ」の棲息限界水温の比較

オオジャコガイは、熱帯のサンゴ礁海域に棲息する二枚貝の一種で、従来、分布の北限はフィリピンとされていた。すなわち、亜熱帯海域である琉球列島海域には分布しない“種”である。その理由は、冬季の水温が低く、オオジャコガイの生育限界を越えていることによる。左の図を見れば、一目瞭然!八重山諸島以外は、いずこもオオジャコガイの自然分布域で、北オーストラリアを除き、年間を通して月平均水温は27〜29℃の範囲にある。グレートバリアリーフ北部の7,8月の平均水温23℃は、オオジャコガイの棲息限界水温とみなされる。一方、八重山諸島の冬季の平均海水温は22℃で、わずか1度という僅少差でわが国には分布し難いことになる。

 

 

 

 

 

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