●西表島取材時、東部仲間川上流のジャングルの上に突出する巨大な「サキシマスオウノキ」を発見。樹高約20m板根の高さ3.9m、胸高周囲3.5m、縦横に伸びた板根の総面積は126.5㎡、畳にして約77畳敷に匹敵する。《板根》は1cm伸びるのに10年かかるといわれていることから、樹齢は約400年と推定した。沖縄の植物研究家、天野鉄夫県緑化推進委員会委員長は、過去沖縄では確認されていない《驚異的な老木》だと折り紙を付け「天然記念物」指定の必要性を強調した(1982)
日本最大の「サキシマスオウノキ」を見る俳優の近藤正臣氏
●琉球列島最南端の波照間島西方の海で、漁業者が夜間潜水漁中に、水深30mのサンゴ礁のくぼみに潜んでいた「タカラガイ」の一種を採集、鑑定を依頼された。それは、殻長9.5cmもある見事な「ナンヨウダカラガイ」で、日本での初記録であった(1983)
●造礁サンゴ類の《タイプ標本》の集大成のため、東独ベルリンの「フンボルト大学博物館」に滞在中、偶然、明治時代に日本から流出した《幻のオキナエビスガイ》2個を発見、その間の経緯についても明らかになった(1984)
●与那国島近海水深360mから釣り上げた《珍魚》が持ち込まれ、調べた結果、過去に採集例は5回しかないという「エソダマシ」であることが判明した。この仲間は世界中に8種、わが国には2種しか知られていない珍しい魚で八重山では初めて、沖縄本島近海で3匹、神奈川と高知で1匹づつの記録があるが、現在、国内に残っているのは琉球大学で保存中の標本のみ(1984)
●1982年、宮古諸島多良間島の深海から釣り上げられた「キホウボウ科」の珍魚は、東京大学総合資料館と高知大学にも類似標本は保存されていたが、いずれも未知の種とされ、この分野の権威、高知大学教授岡村収博士との連絡で《新種》と断定した。和名を「オキキホウボウ」と命名。学名は岡村博士らによって「サティリクチス・カワエ」と発表された(1984)
“もしやシーラカンス?”と騒がれた珍魚「オキキホウボウ」
●石垣島西部屋良部崎沖合、水深140mの海底から釣り上げた《珍魚》の鑑定を依頼された。調査の結果、ハワイ諸島産の「アリオンマ・エバーマンニー」という「オオメダイ科」の魚で、和名は「ナガメダイ」、外洋の深海(300~500m)に棲息する《深海魚》の一種であることが判明。過去採集例は少なく、ハワイ周辺海域で十数尾、1974年に沖縄本島近くで幼魚が1尾採れたに過ぎず、今回の発見は、学術上極めて貴重な発見である(1984)
●石垣市委託の「石垣島周辺海域サンゴ礁学術調査」で、「造礁サンゴ類」の《珍種》が続々と発見され、石垣島は「世界一のサンゴの宝庫」という《白井説》が立証された。世界で未記録の《新種》21種、日本で初めて棲息が確認された《日本新記録種》が57種、白井・江口によりそれまでに記録された《新種/新記録種》165種、および、それ以前から分布が確認されている《在来種》61種の、計304種が、地図の上では《点》に過ぎない石垣島周辺海域から発見された。この調査で判明した《日本新加入属》は、「Gardineroseris(ガーデナーサンゴ属) 「Pseudosiderastrea(ニセヤスリサンゴ属)」「Diaseris(アクロバットサンゴ属)」「Herpetoglossa(トゲクサビライシモドキ属)」「Zoopilus(アミガササンゴ属)」「Australomussa(オーストラリアハナガタサンゴ属)」「Scolymia(アザミハナガタサンゴ属)」の7属で、77属に属する造礁サンゴ類が記録された。因みに、日本全国では83属となり、オーストラリアの86属、フィリピンの84属と比較すれば、いかにわが国がサンゴ類の宝庫であるかが分る。これはひとえに石垣島の77属によっていることは改めて言うまでもない。石垣島の2000倍もあるグレートバリアーリーフの86属356種、7000余の島々からなる広大なフィリピンの84属363種と、《点》に過ぎぬ石垣島の77属304種を比較すればこのことは頷ける(1985)
●八重山海域で発見された巨大な「オオジャコガイ」の年代測定結果が出た。米国で「放射性炭素法」による分析の結果、4350~4310年前に生きていたものと判明。これにより、当時の海水温は現在より4,5度も高かったと推論、今後《地球温暖化》が進めば再び世界最大の二枚貝「オオジャコガイ」が琉球列島に豊産することになると《新説》を発表、「オオジャコガイ」の存在は地球温暖化現象の《指標》になると示唆する(1985)
●徳之島で初めて発見された、造礁サンゴ類の《異常斃死》の原因究明に乗り出す。結果、なんらかの原因で「バクテリア」が異常発生し「褐虫藻(鞭毛虫)」が急増、それにより《寄主》のカイメンの一種が異常に繁殖・成長し、造礁サンゴ類の表面を覆い、サンゴの《ポリプ(サンゴ虫)》を窒息死させたものと推論した。通常、サンゴ虫は触手に毒性の《刺胞》をそなえているので、カイメンは付着出来ない。バクテリアが、サンゴの毒性を阻害する働きをするのではとも考えるが、解明には至っていない。因みに、このカイメンは、カイメン分類の世界的権威、「アムステルダム大学動物分類研究所」のバン=スースト博士の鑑定で、1967年、ハワイで初めて見つかったのみという、珍しい「コルクカイメン科」の「テルピオス・グラヌローサ」と判明。和名は白井所長により「クロカワカイメン」と命名。この後、同様の被害は沖縄の島々からも続々と報告され、造礁サンゴ類の繁栄をおびやかす新たな要因として、関係方面の注目を浴びた(1985)
●石垣島の屋良部半島西側の海底から発見された大型獣の骨の解明を依頼された。三重短期大学教授角田保博士の鑑定で、100万年前まで琉球列島に棲息していた「リュウキュウジカ」の《下顎骨》であることが判明(1985)
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